「Inevitable Conflict」用語解説

僭越ながら、この異界クレイトスについて貴族の端くれとして説明することになったハインリヒだ。
重苦しい話も多いが、このアルカードと共に俺たちの知る限りを伝えられたらと思う。

先に紹介に預かりました、もうだいぶ長いことハインリヒと共に過ごしてる腐れ縁のアルカードですよーっと。
あまり貴族らしくないこと……とは俺たちは思ってないけど、まぁ世間的にはそんな感じのことを普段やってるもんで、
真面目なこいつはこんなこと言ってまーす。

……本題に入るぞ。クレイトスは有力貴族たちを中心に統治されているが、王など頂点に君臨する存在はいないという
少し風変りとも言える異界だ。一応、俺もアルカードも有力貴族の生まれではあるが……まぁこの話は追々に。
まずはこの異界を創り出したとされる存在のことを話そうか。
「理」について

クレイトスの中枢部には「理」と呼ばれる、この異界を創り出したとされる核のようなものが存在し、祀られている。
それが一体何なのかは未だに解明はされていないが、ありとあらゆるものとは異なる性質をしていることから
そう信仰され続けている。

あの祠の近くってほんとに何とも言えない空気感なんだよね。頭がスッとするというか、変に落ち着くというか。
おじさんは少し苦手かも。魔力の調子はすっごく良くなる気はするんだけどねぇ。
「理」がクレイトスを創り出したってのは実際そうなんだろうなぁ、っていう説得力がある場所って感じ。
理の崩壊について

そんな「理」が17年前、突如として暴走し、クレイトスに甚大な被害を齎した。
理の崩壊と呼ばれる、原因不明の大災害。……俺達がずっと、真相を追い求めている事件の事だ。
巻き込まれた人々や家は何一つ助かること無く、今も尚復興作業が続いている程の傷痕を残している。

異界創成以降、「理」が暴走したなんて記述は一切残ってないが故に当初の混乱は凄まじいものだった。
何しろ、守護神的な存在でもあったし、あまりにも突然で一瞬の出来事だったしね。
情けない話……俺たちも現実逃避が酷かった。向き合うのに何年費やしたことか……

……俺達の大切な友が、これに巻き込まれ、亡くなっている。
17年間で得られた情報は決して多くは無いが、俺達には今、志を共にする大切な仲間達が大勢いる。
あいつの為にも……必ずや、事の真相を解明して見せる。

自然的な災害なのか、人為的な災害なのか、断定はせずにどちらの線でもあたってるけど……
一般的には後者の説の方が唱えられているんだよね。もし本当にそうだとしたら、嫌な話極まりないけど……
それはそれで、「理」が引き起こした訳じゃないとなるのは民たちにとっては救いになるのかもねぇ。
貴族について

この異界の貴族についてだが、先述の通り王は存在しない。嘗てはいたそうだが、今となってはその形式も薄れ、
各地の有力貴族達が主体となってこの地を統治している。俺達のバーデラッハ家とアーデルファン家もその内の一つだ。
本来なら父の後を継いで当主となるはずだったが……件の災害の解明に注力する為、叔父上に無理を通して頂いている。

お前の両親は小さい頃に亡くなられてるんだったよな。あ、俺のとこは一応元気にやってる。らしい。
俺は親の反対を押し切ってこいつといるから、ほぼ縁切られてる状態でねぇ……悪いとは思ってるし、別に貴族の
務めを投げ出したい訳でもないし、一人息子だし継がなきゃってのも分かってるんだが……

お前がご両親と向き合う為にも、何としても解決しなくてはな。
少し逸れたが、クレイトスにとって貴族は居なくてはならない存在だ。当然その手腕に民の安寧が委ねられている
のだから責任も大きいが、それを全うしてこそ貴族の務めだと俺は思う。

立場は特異だが、俺たちだって貴族としての在り方と誇りは片時も忘れちゃいない。
だからこそ「理の崩壊」の真相解明だってその一部だと考えている訳でもあるし、本気で取り組んでいる。
民あってこその貴族だし、この地の平和を守り、作っていくことは常に俺たちの使命でもあるんだ。
魔法について

最後に、クレイトスに於いて最も切り離せないのが魔法の存在だ。
魔法は使うことが出来る者とそうでない者とに二分されており、俺は不得手ではあるが前者だ。
というのも魔法を使える条件が、量の多少は問わず生まれた際に魔力分子を内包していたかで決まるんだ。

努力ではどうにもならないってやつだね。しかも基本的に魔力分子を宿して生まれてくる子は貴族の血筋であり、
一般的には魔法の存在すら知らない民の方が大多数を占めてるんだよね。理由は一説に依ると、有力者がその力を以て
民衆を導く指標となる為に神が授けた叡智、なんてのもあるみたいだけど。

その為か魔法を使える人口は非常に少ない。
ただ、俺たちの仲間にも貴族の生まれではないが魔法を使える奴は何人かいるから、必ずしも貴族だけという話では
ないらしい。これも皆との出会いが無ければ知り得ないことだったかもしれん。

魔法を扱えるものとして、その力を世の人々の為に使うことは貴族である俺たちの本分でもあり、誇りでもある。
この力を正しく使って、これからも尽力していきたいね。